【共通テスト2024】世界史B解答・解説④

 

 

はじめに

前回に引き続き、2024年1月13日(土)に実施された「大学入学共通テスト世界史B」の解説をしていきます。

 

問題は次のURLよりご確認ください。

https://www.fukuishimbun.co.jp/common/dld/pdf/fe46d519cdc0e50ef3d02621341ca73c.pdf

 

今回は第4問の解説です。

 

 

第1〜3問の解説はこちらからどうぞ。

 

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第4問 言語や文字とそれを用いた人々の文化やアイデンティティ

A シリア語とシリア文字に関する歴史

問1 〔 25 〕コンスタンティヌス帝の事績【知識】

 空欄( ア )については、「ローマ皇帝( ア )による公認」とある。キリスト教を公認したローマ皇帝コンスタンティヌス帝。313年のミラノ勅令により公認。よって、コンスタンティヌス帝に関わる選択肢を選べばよい。

 事績は(い)が正しい。租税収入の安定をねらい、332年にコロヌスの移動を禁止する勅令を発し、その移動を禁止して身分を固定化、これによりコロナトゥスを強化した。(あ)の軍管区制は、ビザンツ帝国中期の地方統治制度。(い)が細かい知識であるため、(あ)を消去したい。

 公会議はYが正しい。コンスタンティヌスはニケーア公会議(325年)を開催。ここではアタナシウス派が正統、アリウス派が異端とされた。ネストリウス派はエフェソス公会議(431年)で、単性論派はカルケドン公会議(451年)で異端とされた。

 よって、正解は⑤

 

 

問2 〔 26 〕イスラーム文化と王朝【知識】

① 誤り。ゼロの概念はインドのグプタ朝期に用いられるようになり、イスラーム世界へ伝わった。

② 誤り。細密画は中国絵画の技法の影響を受けている。イル=ハン国のモンゴル人がイスラーム世界へ広め、独自の発展を遂げた。アマルナ美術は古代エジプトのアメンホテプ4世の時代に栄えた写実様式の美術。

③ 正解マドラサウラマーを養成する教育機関。エジプトのアズハル学院セルジューク朝のニザーミーヤ学院などが該当。

④ 誤り。イクター制ブワイフ朝に始まる制度。軍人・官僚に対し、俸給(アター)の代わりに土地の管理と徴税権を付与。

 

 

問3 〔 27 〕オリエント史と資料の読取【知識+読取】

① 誤り。会話文にあるとおり、シリア語はアラム語から派生している。シュメール人はメソピタミア南部で最古の文明を築いた民族であり、シュメール時代にはアラム文字もシリア文字も存在しない。

② 誤り。パルティアは前3世紀から後3世紀まで栄えた遊牧イラン人による王朝。ジズヤはイスラーム世界における人頭税を指す。パルティアにジズヤは存在しない。

③ 正解。会話文の先生の発言に「8世紀のイラクでは、キリスト教徒が・・・学術的基盤となりました」とある。アッバース朝バグダードでは、キリスト教徒が学術発展に寄与していた。9世紀に建設された知恵の館が有名。

④ 誤り。会話文の先生の発言に「11世紀から13世紀には、シリア語でも・・・」とある。第1回十字軍は1096年に派遣されている。先生の発言から十字軍の時期もシリア語は学術言語として重宝されたことがわかる。

 

 

 

 

B コロンブスにみる国家と言語の関係

問4 〔 28 〕ローマ文化・ルネサンス宗教改革【知識】

 誤っている選択肢を選ぶ。

① 正解。ルターはザクセン選帝侯の保護下で、ラテン語の『新約聖書』をドイツ語に翻訳した。この翻訳された『新約聖書』は、グーテンベルクによって改良された活版印刷機によって印刷され、広く普及し、宗教改革の広がりの一因となった。なお、ルターは『九十五か条の論題』はラテン語で書いている。

②、③、④はいずれも正しい。

 

 

問5 〔 29 〕大航海時代・スペイン絶対王政【知識】

① 誤り。スペインによるレコンキスタは1492年までかかっているが、ポルトガルは13世紀中頃に完了している。ポルトガルレコンキスタについては教科書に記載がないが、15世紀前半のエンリケによる航海事業や、1488年のバルトロメウ=ディアスによる喜望峰到達からわかるように、財政的な余力があると判断できる。

② 誤り。トルデシリャス条約は1494年に締結されており、コロンブスの航海(1492年)より後の出来事である。

③ 誤り。ポルトガル王位を継承したスペイン王はフェリペ2世。コロンブスとは時代が異なる。

④ 正解ジョアン2世の治世の1488年、バルトロメウ=ディアスは喜望峰に到達。これ以後、インド航路開拓に専念しており、西廻りのコロンブスを支援しなかったと判断できる。

 

 

問6 〔 30 〕国民国家【(知識+)読取】

 思い込みの内容は(あ)が正しい。リード文に、スペインでは「国語」が成立しており、スペイン語を書く者はスペイン人であると思われていたという内容の文章がある。(い)は誤り。ジェノヴァはスペインに支配されたことはなく、十字軍時代から都市共和国として繁栄した。

 価値観はXが正しい。同じ言語を話すのが当然だという価値観があるからこそ、スペイン語を書くことができたコロンブスはスペイン人だと思い込まれていた。

 よって、正解は①

 

 

 

 

C 中国の書道文化にみる時代観

問7 〔 31 〕唐代の反乱【知識】

 空欄( イ )について、会話文の神本さんの発言に「作品に見える「逆賊」は、安禄山を指しているのでしょうか」とある。よって、空欄( イ )は安史の乱

① 誤り。唐末の黄巣の乱。唐政府が塩の密売摘発を強化したことに反発して、王仙芝と黄巣が反乱を起こした。

② 誤り。藩鎮とは、節度使を主とする軍閥である。安史の乱以後、藩鎮は地方勢力として自立した。

③ 誤り。朱全忠を意識した選択肢と思われる。黄巣の反乱軍に加わったが、唐に降り、反乱を鎮圧。節度使となった後は、907年哀帝を廃して唐を滅ぼし、後梁を建国した。

④ 正解ウイグルの援助を受けることに成功し、763年に反乱は鎮圧された。

 

補足

顔真卿は唐代の書家でありながら、唐朝に仕える役人だった。義勇軍を率いて安史の乱に抗戦した。この戦いの中で一族の多くが亡くなり、これを悲しんだ顔真卿は、彼らを追悼するために「祭姪文稿」を書いた。安禄山を「逆賊」と表したのもこのためである。

 

 

問8 〔 32 〕魏晋南北朝と唐代の文化【知識(+読取)】

 空欄( ウ )は(い)が正しい。韓愈は古文復興運動の担い手である。韓愈らは、南朝文化で流行した四六駢儷体を形式的な技巧に頼ったものだと批判し、漢代以前の古文を理想とする文学運動を展開した。王羲之南朝文化を代表する書家であるがゆえに、韓愈は王羲之の書を「俗書」だと批判したのだろう。

 空欄( エ )はXが正しい。直前に「欧陽脩が顔真卿の楷書を人物の反映として高く評価」「蘇軾も顔真卿の書を力強く画期的なものとして」とある。宋代においては、形式美を否定して力強さのある作品を残した顔真卿が評価されていることから、唐代後半期から宋代にかけて、貴族的形式美が否定され、力強さや個性が尊重されるようになったことが推察できる。

 よって、正解は③

 

 

問9 〔 33 〕北魏清朝の政策【知識】

 メモ1は誤っている。乾隆帝は、『四庫全書』の編纂など学術を奨励する一方で、禁書・文字の獄などの思想弾圧を行った。

 メモ2も誤っている。北魏の孝文帝による漢化政策は、胡服や鮮卑語を禁止するなど、鮮卑の自文化を改めるものであった。

 よって、正解は④

 

 

 

 

最後に

全4回にわたり、共通テスト2024の世界史Bについて解説してきました。

例年と同様、「知識+読取」の問題が出題されており、基本的知識を習得した上で史資料やリード文を正確に読み解く力が必要とされます。

ただ、史資料・リード文そのものは読みやすくなっており、その分平均点は上がるのではないでしょうか。

個人的にはアレクサンドロス大王コロンブスに関する後世の解釈の問題がおもしろかったです。

世界史探究の題材になりそうですね。

 

詳細な出題分析はみんなの世界史(@minnanosekaishi)さんをご参考にされてください。

 

 

共通テストが終わり一息つきたいところですが、私大入試や国公立大の前期試験が迫っており、受験生のみなさんにとってはまだまだ正念場が続きますね…

受験指導にあたられる先生方も体調に気をつけて、ラストスパート頑張ってください。

 

また、現在2年生のみなさんも共通テストまで365日を切りました。

勝負はこの瞬間から始まっています。

頑張りましょう。

 

全国の受験生と先生方を心から応援しています。

では。